リースバックは自宅に住み続けながらまとまった資金を調達できるため、老後の費用を確保したい高齢者を中心に利用されています。しかしリースバックにはデメリットもあり、トラブルに発展することも珍しくありません。トラブルの例や、その対策方法について解説します。
リースバックとは
リースバックとは、売買と賃貸が一体となった不動産取引。売却後に、これまで住んでいた住宅と賃貸契約を結ぶことで、継続して住み続けることができる仕組みです。現在、まとまった現金の調達方法として注目されています。
リースバックの仕組み
通常は、自宅を売却すると退去の必要があります。しかしリースバックでは、自宅を売却するとともに賃貸契約を結ぶため、そのまま住み続けることが可能です。住み慣れた自宅から引っ越す必要がないため、高齢者にも人気があります。また、買い戻すことも可能なため、一時的に資金が必要という場合にも利用されます。
しかし、リースバックは大きなメリットがある一方、トラブルが発生するなど、デメリットもあります(詳しくは次の章以降で解説します)。
政府はリースバック契約に関するガイドラインを2020年度中にもまとめる予定です。ガイドラインが制定されることで、契約時の売却価格の決め方の明確化など、リースバックの共通ルールが整備されることが予想されます。将来リースバックの利用を考えている方は、今後の推移に注目しておきましょう。
利用する前に知っておきたい!リースバックのメリット・デメリット
では、リースバックの具体的なメリット・デメリットについて確認していきましょう。
リースバックの5つのメリット
① まとまった現金が得られる
まず最も大きなメリットは、まとまった現金を得られるという点です。銀行などからの借り入れでないため、その使い道は自由。このため老後の生活費の他、子どもの教育資金や事業資金など、まとまった現金が必要な場合に利用されることが多いです。
メリット② 住み慣れた家に住み続けられる
もうひとつ大きなメリットとして、住み慣れた家に住み続けることができることが挙げられます。歳をとってからの住み替えは大きな負担となりますし、引っ越しにより子どもの学区が変わるのを避けたいという方もいらっしゃいます。また、転居を伴わないため、周囲の人に知られずに自宅を売却することも可能です。
メリット③ 住宅ローンから解放される
自宅購入の際、多くの人が住宅ローンを利用しますが、給料カットやリストラなどにより返済が滞ってしまうこともしまう可能性もあります。リースバックを利用すれば、調達した資金で住宅ローンを完済することも可能です。
※ただし、売却価格が住宅ローンの残債より低い場合は抵当権が解除できないため、リースバックを利用できません。
メリット④ 固定資産税の支払いがなくなる
固定資産税は、1月1日時点の不動産の所有者に支払い義務が生じます。リースバックでは、所有権が家の持ち主から買い取った不動産会社へと移るため、固定資産税の支払いが不要となります。また、マンションの場合は修繕積立費の支払いもなくなります。
メリット⑤ 買い戻すことも可能
通常の売却では、1度家を手放すと別の住人が居住するため買い戻すことは困難です。しかしリースバックでは将来的に買い戻すことも可能です。例えば、55歳のときにリースバックで得た資金をもとにリフォームし、60歳で退職金が入ったときに買い戻すという使い方もできます。
リースバックの4つのデメリット
① 家賃を支払わなくてはいけない
リースバックを利用して自宅に住み続けるには、家賃(リース料)を支払う必要があります。
家賃は売却価格に対する利回りで算出されることが多いため、売却価格が高いとその分家賃も高くなります。家賃が周辺の家賃相場よりも高くなることも多いため、長期間住む場合は家計への負担が大きくなります。
デメリット② 所有権がなくなる
リースバックは売却を伴うため、当然ですが、自分の持ち家ではなく賃貸住宅を借りて住むことになります。所有権がなくなるため、自宅を担保に融資を受けられなくなる他、遺産として自宅を残すことができなくなります。
デメリット③ 相場よりも売却価格は安く、買い戻し価格は高い
リースバックでの売却価格は、一般的な仲介市場における取引価格の60~80%程度となります。また、買い戻し価格は売却価格の1.1~1.3倍程度となり、住んでいる間の家賃と合わせるとかなり割高となります。
デメリット④ 設備修理は借主負担
通常の賃貸物件では、給湯器や水道などの設備の修理は貸主が費用を負担します。しかしリースバックでは、基本的に借主自身が修理費を支払って補修します。
リースバックとリバースモーゲージの違いは?
自宅を使った資金調達方法としては、リースバックのほかにリバースモーゲージがあります。どちらも、自宅に住み続けながら資金を調達するという面では同じですが、異なる点も多くあります。
ここでは、リバースモーゲージとリースバックの違いを見ていきましょう。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、借りたお金は亡くなった後に不動産を売却して返済する方法です。金融機関や各都道府県の社会福祉協議会等が取り扱っており、どこを利用するかによって借入金の使い道や対象となる物件などが異なります。
借入金は一括でまとめて受け取る以外に、毎年一定金額を受け取ったり、決められた範囲内の金額を随時受け取ったりすることも可能です。
リースバックとリバースモーゲージの違い
一見、似ているようにも思われるこの2つの仕組み。しかし、リースバックは家を売るのに対し、リバースモーゲージでは家を担保に融資を受けるため、異なる点が多くあります。詳しくは下の表をご参照ください。
リースバックとリバースモーゲージの比較
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
資金の用途 | 制限なし | 制限あり |
対象物件 | 制限なし(工場等の事業用物件も可) | 一戸建て(マンションは可能な場合もあり) |
年齢条件 | なし | 60歳以上など制限がある場合が多い |
家族の同居 | 可能 | 配偶者のみ |
所有権の移転 | あり | なし |
取扱機関 | 不動産会社等 | 銀行や社会福祉協議会等 |
固定資産税の納税義務 | なし | あり |
推定相続人からの同意 | 不要 | 必要 |
契約終了後 | 買い戻し可能 | 売却 |
リースバックとリバースモーゲージの使い分け方
それでは、リースバックとリバースモーゲージはどのように使い分けたら良いのでしょうか。
まず、目安となるのが年齢です。リバースモーゲージは亡くなった後に物件を売却することを条件に融資を受けるため、年齢に条件が設けられている場合がほとんど。そのため、年齢が条件に満たない場合はリバースモーゲージを利用することはできません。
次に、買い戻しの意向の有無です。「退職金などのまとまった資金が調達できたら買い戻したい」という方の場合は、リースバックを選択します。
また、リバースモーゲージの場合は、老後の生活資金や医療・介護費用や自宅のリフォーム費用など用途に制限があります。このため、調達した資金を事業等に使いたいときはリバースモーゲージは利用できません。
どちらを利用したほうが良いかはケースバイケースのため、不動産の専門家に相談したうえで決定すると良いでしょう。
リースバックのトラブル事例
リースバックは、場合によってはトラブルとなってしまうこともあります。どのような問題が起きる可能性があるのか、前もって把握しておきましょう。
トラブル① 高額な諸費用を差し引かれた
リースバックは不動産の売買と賃借が一体となった取引のため、いくつもの諸費用がかかります。しかし、この諸費用には明確な基準がなく、どの程度の費用がかかるのかは会社ごとに異なります。
このため、売却価格を高くしておきながら事務手数料や測量費、耐震補償費などの名目で高額な諸費用を差し引かれる場合もあります。
トラブル② 家賃を上げられた
リースバック契約時に家賃を上げない約束をしていても、更新時に値上げの要求をされることがあります。最悪のケースでは、高くなった家賃が支払えなくなり、転居を余儀なくされることもあります。
トラブル③ 物件を無断で売却された
買い戻しを前提でリースバック契約した場合、基本的には物件を無断で売却されることはありません。しかし、一部では業績不振等で賃借契約期間中に無断で第三者に売却されてしまうケースもあります。
トラブル④ 退去を求められた
リースバックでの賃貸契約は、更新が原則の普通借家契約ではなく、期間満了により契約が終了する定期借家契約が一般的です。
借主・貸主の双方が合意すれば再契約して住み続けることもできますが、契約期間満了によって退去が必要となる場合もあります。また、契約期間中であっても買い取った不動産会社の倒産や第三者への売却等により、退去を求められるケースもあります。
トラブル⑤ 予定通り買い戻しできなくなった
リースバックを利用した場合、家賃が周辺相場よりも高額となることが多く、思うように買い戻し資金が貯まらないこともあります。また、退職金が想定よりも少なかったなど、資金が調達できずに買い戻しできないケースもあります。
トラブル⑥ 家賃が支払えなくなった
景気の悪化や病気などで、家賃が支払えなくなる他、家計に対して家賃が高すぎた場合、支払いが徐々に厳しくなり、最終的には家賃が払えず退去となる場合もあります。
トラブル⑦ 相続人と揉める
周囲の人に知られずに自宅を売却できるのがリースバックのメリットの1つですが、家族にも知らせずに契約することで、揉める原因となることがあります。
例えば、子どもが将来自宅を相続するつもりでいたのに、相談なしにリースバックで売却されたことで、親子の関係が悪化してしまうといったケースなどがあります。
トラブルのリスクを減らす対策方法とは?
リースバックにまつわるトラブルには、契約前の対策で防げるものも多くあります。リスクを減らすために実践すべき内容をご紹介します。
物件の本来の価格を把握する
リースバックで売却すると、通常の売却に比べて価格が安くなります。この価格差があまりにも大きい場合には、リースバックではなく通常の売却を選択したほうが良い場合もあります。このため、まずはインターネットの無料見積りなどを利用し、相場を確認しておきましょう。
複数の会社に見積りを依頼する
1つの会社に決めずに複数の会社から見積りを取ることで、相場よりも安すぎる価格での売却を防げます。見積りを比較する際は、契約更新や買い戻しの可否などの必要条件を優先させたうえで、売却価格だけでなく諸費用や家賃なども含めて総合的に判断しましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
上記のトラブル①~④のように、不動産会社に問題があって発生するトラブルもあります。そのため、買取価格だけでなく買取実績や業績などを確認し、信頼のできる不動産会社を選ぶ必要があります。
マネープランを考える
上でご紹介したように、家賃や買い戻し金額が自身の支払える範囲を越えていることで起こるトラブルもあります。このため、賃料が払い続けられるか長期間の収支シミュレーションを作成したり、買い戻しするためには毎月どれだけ貯金すれば良いかを計算したり、マネープランを考えることをおすすめします。
必要であればファイナンシャルプランナー相談して家計の無駄をチェックしてもらったり、長期のマネープランを立ててもらうのも良いでしょう。
契約書の内容をしっかり確認する
リースバック契約の際は、契約書の内容をしっかりと確認しましょう。特に契約期間と更新の有無は重要です。いつまで住むか、または買い戻しの予定がある場合にはそこまで更新が可能かを確認し、場合によっては覚書を交わすことも必要です。
また、更新料や買い戻しの金額についても、契約時に確認しておきましょう。
まとめ
リースバックは、自宅に住み続けながらまとまった資金を得られるというメリットがある反面、一部では家賃を上げられたり、勝手に売却されたりなどのトラブルも発生しています。
こういったトラブルを防ぐには、複数の会社から見積りを取ったうえで契約書をしっかりと確認するということに加え、信頼できる不動産会社選びも重要です。
いい不動産では、お客様のご希望に合わせ、リースバックや不動産の売却をサポート。経験が豊富な、信頼できる不動産会社のご紹介も行っています。リースバックとリバースモーゲージのどちらが合っているかわからないという方も、ぜひまずはお気軽にご相談ください。