「住み替えのために今住んでいる家を売りたい」「税金対策のために所有不動産を売却したい」など、世の中の不動産市場には常にさまざまな売却ニーズが存在します。そんな中、「家を売りたいけど、まず何をどうすればいいの?」とお悩みの方も多いことでしょう。
一般的に多くの方にとって不動産売却は高額な取引のひとつになるため、不安がつきものです。「不動産がいくらくらいで売れるか見当もつかない」そんな方はまず地域の相場を把握したうえで、信頼できる不動産仲介業者を選定し、所有する不動産価格の査定を依頼しましょう。
売り出し価格や成約価格には、不動産が存在する地域の経済的な発展性や人口の増減状況、不動産の流通状況などが影響します。今回は港区で家の売却を検討している方に向けて、東京都港区エリアの不動産事情に詳しい地元不動産会社ご担当者にお話をおうかがいしました。
今回取材した会社:住友林業ホームサービス株式会社
- 住友林業株式会社の子会社。
- 1964年の設立時の社名は「スミリン土地株式会社」。
- 本社の所在地は東京都新宿区。
- 主に首都圏や近畿地方、東海地方、福岡県の不動産仲介に強みをもつ。
- 取材に応じていただいたのは城南支店長の伊東大輔さん。
売却の流れを把握しよう
「家を売りたいけど、何から始めればいいのかわからない」方には、まず不動産売却の流れと相場を把握することをおすすめします。不動産会社への査定依頼は、その後からでも遅くはありません。まずは不動産売却の大まかな流れを知り、必要な手続きや優先順位を把握しましょう。
不動産売却の基本の流れ
Step1:相場を調べる
▶相場を調べるところから不動産売却は始まります。
Step2:不動産会社に査定を依頼する
▶保有する不動産がいくらで売却できるか不動産会社に査定してもらいます。
Step3:不動産会社と契約を締結する
▶査定内容に問題がない場合は契約を締結します。
Step4:不動産の売却を始める
▶実際に不動産を売りに出します。
Step5:売却・引き渡し
▶買い手が見つかれば売却の手続きを行い、不動産を引き渡します。
【売却のコツ①】東京都港区の相場を把握する
伊東さん、本日はよろしくお願いします!さっそくですが、不動産の売却を検討する際に、売主としては、まず何をするべきでしょうか?
まずは周辺相場を知ることが大事ですね。港区では、築年数が10年から20年となると、高いもので坪400万円ほどが一般的です。
新築や築年数が浅い物件では坪600万円にのぼることもありますね。東京都内でもっとも高いといわれる千代田区に匹敵する水準です。
東京都港区の相場は?
港区ではどのような物件が主力なのでしょうか?
港区では、広さ60㎡から70㎡、間取は2LDK以上のマンションタイプが主力です。価格帯としては、7,000万円から1億円あたりの物件になりますね。
同じくらいの広さや築年数でも金額が変わってくる場合は何が影響しますか?
物件のグレードや設備などの仕様によっても、大きく価格は前後しますね。またマンションのブランドも大きく影響するでしょう。
港区では、主にどのような層の方が家を購入されているのでしょうか?
港区では、ダブルインカムと呼ばれる夫婦共働きで、世帯年収が1,500万円を超える世帯の購入が多い傾向にあります。職業としては、会社経営者、大手ビジネスマン、士業の方も比較的多い購買層です。
売りどきはいつ?
港区の不動産動向についてはどう感じていますか?
まさに今が売りどきです。不動産価格はピークアウトしていて、価格調整の局面に来ているのでしょう。
日本の給与所得の問題から、不動産は流通減になるとみています。実際に取引相場は、売り出し価格から5%は下げる必要がでているのです。
バブル崩壊後としては、不動産価格水準は今が一番高い時期です。保有する不動産価値の目減りを防ぐためにも、資産を資本に変えるタイミングは、まさに2020年の今だと思います。
もうちょっと待ったら高くなる…ということでもないんですね。
これまでは利便性が高く比較的資産価値の高い都心でコンパクトに暮らしたいという需要が多くありました。しかし今は、そういった都心=安心、都心=価格安定といった概念が崩壊しつつあります。
新型コロナウイルス拡大の影響によるリモートワークなどの増加で都心に住む必要性が以前より少なくなった影響が大きいですね。今後もこの影響は続くといって良いでしょう。
- 不動産売却に失敗しないために売主側も周辺の相場をまず把握することが大切
- 港区の主力物件は2LDK以上のマンションタイプで価格帯は7,000万円から1億円
- 売りどきはズバリ今
参考)東京都港区での直近の取引価格情報
中古マンション
専有部分面積70㎡ | 専有部分面積75㎡ | 専有部分面積80㎡ | 専有部分面積85㎡ | 専有部分面積90㎡ | 専有部分面積95㎡ | 専有部分面積100㎡ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
駅徒歩10分以内 | 8,900万円 | 9,300万円 | 1億4,000万円 | 1億3,000万円 | 1億5,500万円 | 2億1,000万円 | 2億5,000万円 |
駅徒歩10分以上 | 1億1,000万円 | 6,300万円 | 8,150万円 | 7,950万円 | 8,300万円 | – | 9,800万円 |
戸建て
専有部分面積70㎡ | 専有部分面積75㎡ | 専有部分面積80㎡ | 専有部分面積85㎡ | 専有部分面積90㎡ | 専有部分面積95㎡ | 専有部分面積100㎡ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
駅徒歩15分以内 | 1億2,000万円 | 8,750万円 | – | – | – | 1億円 | – |
駅徒歩15分以上 | – | – | – | – | – | – | – |
※2019年取引価格中央値
参照:国土交通省「土地総合情報システム」
【売却のコツ②】東京都港区で高く売るために地域特性を把握する
地域特性を知るメリットとは?
地域特性を知ることのメリットはなんでしょうか?
地域特性を理解すると、どのようなお客様をターゲットとするか販売戦略を練ることができます。
港区はダブルインカムといった比較的世帯収入の高い夫婦世帯や、小さな子どもがいる若年層のファミリー世帯がメインとなっているので、物件として人気が高いのは2LDK、またはそれ以上のマンションタイプです。
逆に単身世帯が多いエリアの場合は、単身向けマンションの需要が高くなります。地域特性による需要の違いにより、同じ物件でも価格設定が変わってくるのです。
地域の特性を知り、その地域ならではのニーズに合わせた販売戦略を立てることが重要なんですね
東京都港区の街の特性は?
港区の街の特性とはどんなものがあるのでしょうか?
比較的収入の多い方が住まわれており、物価が高いことから都内の他エリアより治安が安定しています。居住エリアの美観なども、比較的きれいに保たれている地域だと思います。
東京都港区の街の魅力は?
港区の魅力といえば、ズバリなんでしょう?
港区の魅力として、大規模な商業施設やオフィスビルへのアクセスの良さを含めた都心ならではの住みやすい環境が挙げられます。
電車やバスで数分の通勤圏内に数多くのオフィス群や商業施設を含んでいる点は、港区の特徴的な魅力ですね。
買い物や日常生活での魅力はどのような点がありますか?
日常生活においては、高価なブランド品を扱う店舗が多く存在する中で、昔ながらの風情を残す白金商店街や麻布十番商店街のほか、ビジネスマンの味方となる新橋周辺の飲食店街など、庶民的な一面ものぞかせるのが港区の特徴です。
その他、港区ならではの魅力的な要素があれば教えてください。
医療施設が充実している点も港区の魅力のひとつでしょう。
東京高輪病院、東京慈恵会医科大学附属病院、 国際医療福祉大学三田病院、北里大学北里研究所病院、東京都済生会中央病院、虎の門病院など、港区6大病院と呼ばれる規模の大きな病院が存在しています。
都内の中でも比較的物価が高くて住みにくい街というイメージもあるようですが、実は庶民的な部分も多いのですね。行政の面では特色はありますか?
港区の行政は、子供を持つ家庭への助成などのメリットが多いことが特徴として挙げられます。
それを理由に隣接区内から移り住む方も多いようです。行政面のサポートが東京都内の中でも比較的手厚いことが港区の特徴です。
なるほど、たしかに出産費用の助成など、港区独自の助成システムは話題ですよね。特に子育て世帯への支援が盛んと聞いています。
小中一貫教育に行政として取り組んでいるのも港区ならではですね。
交通の利便性は?
港区における交通の利便性は、実際のところ人気の要因なのでしょうか?
港区の特徴として挙げられるのが交通の便の良さです。港区内にある新橋駅、浜松町駅、品川駅は、JR東日本の管内でも1日の利用者が多い駅として常にランクインする、東京都内でも主要な駅として位置づけられています。
主要駅があることで、都内の各エリアにアクセスしやすく、通勤時のストレスが軽減される点が、住居エリアとしての魅力を一層アップしていると言えます。
東京メトロ銀座線、丸ノ内線、日比谷線、千代田線、半蔵門線、都営三田線・浅草線に加えてJR山手線と多数の鉄道を利用しやすい環境にあることから、日本国内でも有数の交通アクセスの良さを誇っています。
通勤時以外にも、休日の買い物やおでかけなどで多くの選択肢を持てるので、居住者にとっては大きな魅力です。
港区には、電車以外の面で居住者の利便性に繋がる要素はありますか?
さらにいえば、バスの利便性という魅力もあります。
例えば、湾岸のタワーマンションなどの多くは海沿いに建設されており、主要駅から遠いため不便かと思われがちです。
しかし、マンション専用のバスが運行されているケースが多く、さらにそのバスの運行本数も多かったりと、通勤や日常生活での不便さを感じさせないほど独自の付加価値をもつ物件も多くみられます。
JRの新駅として高輪ゲートウェイ駅ができましたが、街の魅力アップに繋がっていますか?
駅が開業したことよりも、周辺の商業施設が今後さらに充実してにぎわいを見せることで市民性が生まれ、今後より一層、街としての魅力が高まってくると思いますね。
- 不動産売却の際にはまず地域特性を知ることで緻密な販売戦略が立てられる
- 港区の特徴は庶民的な一面もある生活圏と医療施設の充実
- 港区の電車とバスによる交通の利便性も優れている
【売却のコツ③】売却を考える際に知っておきたいこと
2~3社の不動産会社から話を聞く
不動産会社に相談をもちかける場合、1社にのみ相談をするべきでしょうか?それとも、複数の不動産会社に相談するべきでしょうか?
1社のみに相談を持ちかけるだけだと、その会社、またはその担当の偏った話しか聞くことができません。できるだけ多くの不動産会社に話を聞くと良いでしょうね。
とはいえ10社も20社も話を聞いていたら時間がいくらあっても足りないので、最低でも2~3社に相談してそれぞれの会社から複数のアドバイスを聞いておくと良いでしょう。
不動産売却の具体的な方法、ターゲットの絞り込み、宣伝手法、広告の訴求内容、販売期間などについて、より密に細かな販売戦略を立てることが可能になります。
なるほど。より多角的に検討できるようになりますね!
他にも、複数の不動産会社から話を聞くことで、売主にとって大きなメリットがあるんです。
どのようなメリットですか?
複数の不動産会社から少しでも多くの情報を得て、各不動産会社からの情報量や提案量、提案オプションの幅などを冷静に比較検討することが大切です。
より最適な会社選びや売却のタイミングを図ることができ、結果的に高く売ることに繋がります。できるだけ高く売りたい方こそ、ぜひ複数社から話を聞いていただきたいですね。
売却の動機・目的を明確にする
所有する不動産の条件や環境にあった的確な提案を受けるためには、不動産会社にどのような内容を伝えるべきでしょうか?
なぜ今その不動産を売りに出したいのかという売りたい動機や、いくらで売りたいのかという要望を細かく伝えることが大切です。
住み替えのために家を売りたい方もいれば、新たな資産形成のために売りたい方もいらっしゃいます。そういった動機や販売後に希望するアクションにより、不動産会社側は、どう売るか、いつ売るか、何に注意すべきかなどを踏まえて販売戦略を立てます。
さまざまな仲介取引を経験してきた専門業者ならではの視点からアドバイスもできるようになります。現状の詳細はもちろん、お客様の今後の展望なども含めて、情報をしっかり伝えることが大切ですね。
一般媒介と専任媒介、どちらを選ぶべきか
いざ家を売ろうとする際に迷ってしまうのが不動産会社の選択です。
その任せ方としては主に、複数の会社に任せる一般媒介と、1社のみに専属で任せる専任媒介という方法がありますが、高額な取引となる不動産の売却を任せるべき不動産会社は、どのような点に注意して選ぶべきなのでしょうか。
一般媒介と専任媒介では、不動産会社にとっておこなう業務内容はどちらも大きく変わりません。ただ社内の人的なリソースの使い方や予算の掛け方は専任媒体のほうが比重が高くなります。
よって、より手厚いフォローを行ってもらえる専任媒介で任せられるような信頼できる不動産会社がすでにあれば、そこを選ぶのもありでしょう。
そのようなお付き合いがない場合は、どうやって選べば良いでしょうか?
取引がない場合は、なかなかピンポイントで任せることは難しいですよね。その場合は、やはり複数の不動産会社を訪問して話をしっかり聞いてみることをおすすめします。
その中で、売主の要望を汲みとってその実現へ向けて努力してくれる会社かどうか、デメリットもきちんと伝えながら意思確認を都度してくれる会社なのかを見極めてください。
そういった視点できちんと長期的に活動してくれそうな軸となる会社をまず選び、そのほかにも複数社に展開するという一般媒介の手法をとることをおすすめします。
専任媒介、一般媒介のどちらにせよ、しっかりと話しを聞いてくれて、売主様のご希望に対する提案オプションを豊富に持ち、長く継続してお付き合いができそうな会社かどうかを見極めることが大切ですね。
- できるだけ高く売りたい方こそ、ぜひ複数社から話を聞くべき
- 物件の詳細や今後の展望なども含めて情報を伝えること
- 提案オプションを豊富に持ち、長く付き合える会社を探すこと
最後に住友林業ホームサービス 城南支店長伊東さんより
住友林業ホームサービス 城南支店の伊藤でございます。私たちは、住まいのプロフェッショナルとして、質の高いサービスをご提案ご提供させていただいております。不動産の購入、ご売却、ご相続のご相談に関しましては、ぜひともお声がけくださいませ。
まとめ
- 港区における中古住宅の相場は、7,000万円~1億円
- 港区の中での主要な間取タイプは2LDKマンション
- 港区は高収入な夫婦世帯や若年層ファミリーの人気が高い
今回は、住友林業ホームサービス城南支店支店長の伊東さんに、港区における不動産売却の相場、今後の動向、港区の街の特性、スムーズに売却するための不動産会社選びのポイントなどをうかがいました。今回のお話から、不動産会社を選ぶ際のポイントとして下記の4点が挙げられます。
- 要望を聞いてくれて実現へ向けて努力してくれるか
- 提案のオプションを豊富に持っているか
- デメリットも伝えて、都度意思確認をしてくれるか
- 長く継続してお付き合いできそうか
不動産の売却は一生のうちでも貴重で高額な取引です。そのため、売るタイミングや任せる不動産会社、さらに販売方法を見誤ると大きな損失を抱えてしまう可能性があります。港区で家を売りたい方は、ぜひ上記のポイントをおさえて最良の不動産売却を目指してください。